2006年、名古屋セントレックス市場へと上場を果たし、会社は新たなステージへの挑戦を開始した。会社の命運をかけた「街づくり」、265棟の大型分譲プロジェクトだ。
その土地は、東京都あきる野市、JR青梅線の福生駅から徒歩15分のところ、多摩川沿いの壮大な敷地である。ここに、日本のどこにもない、三栄建築設計しかできない「街づくり」をしようという強い想いを抱きプロジェクトはスタートした。
まずは街づくりの基本である「道路計画」から、開始し、住戸部分を決めていく。様々なロケーションの街区をつくり、その後個別に、住宅の間取りを考えていく。265もの土地があれば、当然同じ形、同じ面積の土地は多くなる。通常は、この土地に建築する住宅は、パターン化される。結果、その街の住宅の多くは、「同じ間取り」になり、住宅の形が同じであるから外観デザインも同じものになっていく。これが通常の建売分譲住宅である。
265棟の大型分譲住宅「ブリティッシュタウン福生」
しかし三栄建築設計は、「同じ家は、つくらない。」のである。街全体のコンセプトを「ブリティッシュタウン」と決め、福生の地に、「英国風街並」を誕生させるという大枠を決め、265の土地に、1つ1つ設計士が間取を入れていく。この街に住む家族のあらゆる生活スタイルやニーズを想像し、「テラスのある家」や「書斎のある家」、「大きな吹抜けのある家」や「キッチンの充実した家」などそれぞれに個性がある間取をつくる。当然間取が異なれば、建物の形が異なるため、それぞれが個性のある英国風の建物外観となっていく。こうして265もの間取、デザインを持つ「ブリティッシュタウン福生」が誕生したのである。
この英国風分譲地は、2008年の不動産不況をもろともせず、他社が苦戦する中で完成した街区から順調に販売されていき、当社の志す「家づくり」は間違いではなかったことが証明されたのである。
会社として2つ目の街づくりは、「ミコノス島」の再現であった。ミコノス島とは、エーゲ海に浮かぶギリシャの島。白亜の外壁とブルーのアクセントカラーを使った建物で構成される島であり、世界的にも有名なリゾート地である。45棟という一段の街並みを、埼玉県の新座市に再現する。日本には例がない、壮大な挑戦であった。
この「街づくり」も当然に、すべて異なる間取である。ブリティッシュタウン福生と同様、あらゆる生活スタイルを想定し、1つ1つの土地に間取を考えていく。ルーフバルコニーやテラス、吹抜け、セカンドリビングなど多彩な間取が生み出されていった。
外観については、ミコノス島をイメージさせるべく、外壁を白一色とし、玄関ドアやバルコニー手摺についてはアクセントカラーを配することを決めた。但しそれだけでは、45棟の街並みが単調となってしまうため、建物の形を変えてリズムをつける必要があり、街並み全体を見ながらも、棟ごとのフォルムを決めていくのである。こうして、ミコノス島は再現され、このプロジェクトも異例の速さで完売となっている。
45棟のエーゲ海の街並みを再現
三栄建築設計は、都心部エリアへの都市型3階建てで成長をした会社であるが、拡大期に入り、郊外部でも大型の街づくりに挑戦するようになり、現在に至るまで、数多くの大型プロジェクト「街づくり」を実現してきたのである。
全45棟イタリア・トスカーナの街並み・家作りを再現した「ソラーナ新百合ヶ丘」。